初夏の北アルプスを縦走する
前述した3週間の休暇で前半の四国の山旅から無事に戻り暫く休養を取った後、後半は趣向を変え北アルプス北部の白馬岳をめざすことにした。3年前に大雪渓から白馬岳をめざしたが台風で断念している。今回はどうせ行くなら難所の不帰の嶮も歩いてみたいと思い八方尾根から栂池までの縦走で計画した。
休みは充分あるので初日は一日かけて白馬村の八方まで移動した。この辺は通いなれた道で安心感がある。途中木崎湖の前を通った時に急に懐かしさを覚えて湖畔で休憩した。赤ちゃんを連れた地元の女性に声をかけられて、自分はこれから登山で白馬まで行くことや昔子供とここで良く釣りをしたことなどを坦々と話した。都会では得られないこの雰囲気に心温まる思いがした。
1日目 八方池山荘~八方池~唐松岳頂上山荘
この日の行程は短い。リフトを3本乗り継いでスタート地点の八方池山荘に着く。風が強く途中から小雨混じりの天気となった。梅雨の合間を縫ってやって来たのだから仕方がない。この時期しか休暇が取れなかったのが悔やまれる。小屋に着くと宿泊者は自分一人だけだった。小屋の主人から不帰の嶮の鎖場が雪に覆われて凍っていたら引き返すよう言われた。緊張感で身の引き締まる思いがした。
これから登る八方尾根を見上げる
リフトを乗り継いでスタート地点の八方池山荘まで
八方池を見下ろす
2日目 唐松岳頂上山荘~唐松岳~不帰の嶮~天狗の頭~天狗山荘
本日は今回の登山で最も険しいメインの行程となる。幸いなことに天気は朝から快晴だ。唐松岳までは一登りで着いた。ここまでは過去に二度来ている。山頂からは360度の大展望が得られた。写真を撮りながら暫く休憩した後今回の核心部の縦走に挑む。ここからは幾つかのピークを越えていく。稜線上には心配された雪は無かった。Ⅲ峰とⅡ峰は思ったよりも楽だったが、Ⅰ峰からの下りは垂直に近い岩壁を鎖を頼りに降りる為かなり緊張を強いられる。最低鞍部まで下ると、次は天狗ノ大下りの滑りやすい急坂を一気に登る。下りで滑ったら止まりそうもない。登り切って天狗ノ頭に着いた時は急に安堵感が訪れた。難所は全て通過した。小屋は目の前だ。途中誰にも会わなかった。小屋では後から来た登山者と二人きりだった。
2日目は朝から快晴
最大の難関不帰の嶮を望む 唐松岳頂上山荘を振り返る
幾つかのピークを越える
天狗ノ頭から先は緩やかな稜線が続く
天狗山荘に着いた 小屋前に咲く高山植物
小屋周辺にて 小屋の夕食
夕食後に小屋周辺で撮影
3日目 天狗山荘~白馬岳~小蓮華山~白馬大池山荘
この日は朝から曇りがちの天気でかなり冷える。もう一人の登山者は少し前に出発した。今日も幾つかのピークを越える稜線歩きとなるが昨日の様な危険個所は無い。それぞれのピークで写真を撮った。大雪渓を上から見たときはかなり急斜面でこれを下るのは少し怖そうな気がした。途中一組の登山者とすれ違っただけだった。最後のピーク小蓮華山を過ぎると懐かしい白馬大池と本日宿泊する山小屋が見えてきた。小屋には撮影のためのスタッフが4人来ていて一緒に食事した。明日の行程は短い。今回の山旅もあと少しで終わる。
3日目は曇りがちの天気
白馬三山の一つ白馬鑓ヶ岳(左)と杓子岳(右)
白馬山荘で休憩
白馬岳山頂 最後のピーク小蓮華山
この日のゴール白馬大池山荘が見えてきた 小屋の夕食
4日目 白馬大池山荘~白馬乗鞍岳~栂池ヒュッテ
今日は朝から雨だ。白馬大池に別れを惜しみながら出発した。本日の行程は短いが一ヶ所気になる所がある。昨日情報を得ていたが天狗原手前の下りに長い雪渓があるらしい。懐かしい白馬乗鞍岳を過ぎ暫くして問題の雪渓に差し掛かった。用意してきた6本爪アイゼンを装着しロープを掴んで長い雪渓を下る。下りきって平らになってから道が分かり辛く迷った。あとはひたすら雨に濡れやっとゴールした。本日が一番しんどかったかも知れない。
最終日は朝から雨
車は八方に置いてあるので栂池から八方までバスで戻った。カバーをしていてもザックの中身は雨でずぶ濡れだった。帰ってからの手入れも大変そうだ。この時期白馬には観光客は殆んど居なかった。わずか3泊4日と言う短い期間ではあったが随分長く山にいたような気がする。それだけ内容が濃く充実していたからだろう。これで3週間の休暇後半の山旅も全て終了した。
山を始めて31年、現在57歳まだこれからも山に行くだろう。自身の健康に感謝、いつも快く送り出してくれる妻に感謝、そして危ない時にいつも助けてくれる見えない力に感謝したい。