小説「聖職の碑」のコースを辿る
1913年に実際に起きた山岳遭難事故をもとに描かれた新田次郎の小説「聖職の碑」は1978年に映画化もされている。私が山を始めて間もない頃、山仲間の先輩からビデオを借りて観たのがきっかけで追悼登山として同じコースを歩いてみたいと思っていた。
またそれまで木曾駒ヶ岳には何度も登っていたが、いつも駒ヶ根からロープウェイを使っていたので、一度くらいはしっかり麓から歩かねば堂々と胸を張って登ったとは言えないし山に対しても失礼だと考えていた。
1日目 桂小場登山口~大樽避難小屋~西駒山荘
前日の夜中央道小黒川PAで車中泊し、当日朝ETCスマートインターで降りナビを頼りに桂小場登山口に着いた。登山口には先客が一人いた。挨拶して軽く話をした後先に登って行った。
本日は西駒山荘まで標高差1400mの登りが待っている。無理せず焦らず着実に登る事だけを考える。途中数名の登山者が先に登って行っただけで後は誰にも会わない。これが木曽駒かと思うくらい静かだ。このコースは地元の中学校の学校行事で毎年追悼登山を行っている。過去の遭難事故では一日10時間以上かけて稜線の山小屋を目指したらしいが、これは計画自体が無謀ではと思われる。(当時は西駒山荘が無かった。)平地ならまだしも山で一般の人間が歩く距離ではない。山では常に体力気力に余力を残して行動する必要があると自分は考えている。
小屋に着いた後、小屋の裏にある將基頭山に登った。この付近はコマクサが群生していて目を楽しませてくれた。本日小屋に泊まったのは自分一人だけで一部屋を広々と使わせてもらい静かな夜を過ごした。
桂小場登山口、登山者は少ない
宿泊する西駒山荘が見える
御嶽山が見える
本日宿泊する西駒山荘 西駒山荘を見下ろす
將基頭山山頂 西駒山荘の裏はコマクサの群生地
2日目 西駒山荘~濃ヶ池分岐~木曽駒ヶ岳~宝剣山荘~伊那前岳~宝剣岳~宝剣山荘
今日は今回の登山で最もメインの日だ。小屋の裏でご来光を見た後朝食を食べ出発する。私の場合は一日の歩行時間を短く設定しているので暗いうちに出発する必要もない。今は休みも沢山ある。それと途中で立ち止まって写真を撮ることが多いのでどうしても他の人より時間が掛かる。この頃はまだブログをやることは考えてなかったが、元々写真を撮るのは好きだった。(写真の知識と技術はあまりないが)
出発してすぐに遭難記念碑に着く。亡くなった方々の心はまだこの地に残っているのだろうか。自分の心と一体となるようしばらくは一人静かに思いを寄せた。
高度を上げるにつれどんどん視界が開けてくる。宝剣岳を此方の方向から見るのは初めてで全く違う山に登っている様な気分になる。今までは簡単に稜線に上がって散策していたが、今回はつくづく山の大きさを感じる。
山頂に着くと突然登山者が増え別世界に来たようだ。ここから見る景色はいつもと同じだが満足感はいつもの何十倍も大きい。同じ景色が違って見える。今回はいつもより長く山頂にいた。
本日の宿泊地宝剣山荘に着いた後、目の前の伊那前岳を往復してきたが、それでも時間が有ったので明日登る予定の宝剣岳に登った。明日またここを越えて三ノ沢岳をめざすがここは何回登っても楽しい。
小屋の裏でご来光を見る
「聖職の碑」に登場する遭難記念碑 遠くに槍穂高が見える
稜線に建つ宝剣山荘と天狗荘
駒ヶ岳頂上山荘
登山者の多い木曾駒ヶ岳頂上
頂上木曽小屋を見下ろす
ホテル千畳敷を見下ろす
2日目の宿泊地宝剣山荘 鎖場の連続する宝剣岳の登山道
宝剣岳山頂 頂上の岩に人が立っている
3日目 宝剣山荘~宝剣岳~三ノ沢岳~極楽平~千畳敷ロープウェイ駅
本日の行程は短い。昨日登った宝剣岳をもう一度登るが今日は戻らず縦走する。険しい岩場が連続するがしっかり鎖が付いているので安心感がある。
宝剣岳を通過した後三ノ沢分岐から三ノ沢岳を往復する。三ノ沢岳は縦走路から外れているので登る人は少ない。しかも一旦200m程下った後同じくらい登り返して山頂に着く。帰りもその繰り返しになる。自分も今まで面倒で登った事が無かった。
途中数名の登山者にあったが山頂では後から来た登山者はすぐに戻っていった。自分は時間もあるので今回の登山で最後のピークをじっくり楽しんだ。眩しいくらいの晴天で皮膚は焼け付くほどに熱かった。
帰りは千畳敷からロープウェイ、バス、電車を乗り継いで伊那市で降り、そこからタクシーで車を取りに戻った。
今年の第一回目の夏山は終わった。今年の夏も時間が充分ある。次回は妻と白山に登る。
三ノ沢分岐から見た三ノ沢岳
三ノ沢岳山頂
斜面に広がるお花畑
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