スーさんの山ある記

自身の山歩き人生を顧みる

2017年8月 赤石岳3120m、荒川東岳(悪沢岳)3141m、千枚岳2880m

やり残した南アルプス南部を登る1

 今まで山を30年以上続けてきて南アルプス南部の上河内岳から千枚岳の間は登っていなかった。そこで仕事を辞めて時間のできた今行くしかないと考えた。だがさすがにこの区間を一度に歩くのは余程の健脚者でなければ無理なので2回に分け今回は椹島を起点とする周回コースにした。

 前日に畑薙第一ダム手前の臨時駐車場に車を置きバスで登山基地のある椹島に入った。ここは本格的な登山者か釣り人しか居らず一般観光客の多い上高地駒ヶ根などとはだいぶ雰囲気が違う。実際臨時駐車場に高山植物を見たいという観光客が来たが山を登らないとたどり着けないと知って諦めて帰った。これは南アルプスの観光ポスターが紛らわしいのと本人の勉強不足だろう。

 今回は8月のお盆過ぎにやって来たため小屋も比較的空いており翌日からの登山に備えて静かな夜を過ごした。

             南アルプス南部の登山基地椹島

1日目 椹島~樺段~赤石小屋

 この日は赤石小屋まで標高差1400mの登りが待っている。ガイドブックでは逆回りで紹介しているのもあるが4日目にここを下るのもきつい。自分は急坂は登りに使う方が好きだ。ゆっくりでも登っていれば着実に高度を稼げる。それと樹林帯の登りは地元の低山を登っている様で気分が落ち着く。

 赤石小屋には思ったよりも早く着いた。こじんまりとした綺麗な小屋でスタッフも感じの良い人だった。今朝赤石岳に登ってきた人が上は風が強くすぐに降りてきたと言っていた。明日からは稜線を歩くので少し心配だがとりあえず第一目標の赤石岳には登りたい。

             赤石岳登山口

     小屋前から見る景色

2日目 赤石小屋~赤石岳~小赤石岳大聖寺平~荒川小屋

 昨日あれ程登れば他の山域では稜線に出ている所も多いが、ここではあと500m登らねばならない。つくづく山の大きさを感じる。これが北部の北岳鳳凰山等と比べ登山者の少ない理由だろうか。

 富士見平に上がると一気に展望が開ける。富士山との距離が近い。これが南アルプス南部の魅力だ。ここで最初の休憩にした。

 稜線直下の北沢源頭では急坂で滑りやすい為ここを下りには使いたくない。ただ高山植物が多いので一時心が安らぐ。

 稜線はガスに包まれ視界は無く風も強い。赤石岳山頂に立った後避難小屋で休憩した。避難小屋と言っても管理人さんがいてコーヒーやラーメンなどは提供できるようだ。他にも休憩している登山者がいて管理人の奥さんがハーモニカを拭いてくれた。

 避難小屋を出た後赤石岳、小赤石岳を経て大聖寺平に降りる。ここから稜線を右に外れ荒川小屋に向けてトラバース状に下って行くが、ここで強風にあおられ転倒した。一瞬の出来事で気付いた時には倒れていた。幸いにも倒れたところが山側のハイマツのところで怪我は無かった。岩の上や谷側に倒れたなくてよかった。

 荒川小屋までは随分下った。昨日の赤石小屋と同じ位の標高まで下がった。稜線上に小屋が有れば楽だが南アルプスでは当たり前の様に下る。また明日500m程登らねばならない。小屋前から見ると中岳への登りがかなり急に見えた。そのまえに明日の天気が心配だ。

                        富士見平からの富士山

             北沢源頭は高山植物が多い

                 赤石岳山頂

 赤石岳避難小屋                  荒川小屋が近づく

3日目 荒川小屋~荒川中岳~荒川東岳~千枚岳~千枚小屋

 この日は朝から小雨交じりの強風が吹き荒れていた。稜線はもっとひどいだろうと予想される。暫く思案に暮れ小屋に停滞することも考えたが他の登山者は何事もないかの様に出発していく。小屋のスタッフも普通に見送っている。自分も意を決して出発することにした。寒さのため沢山着込んだが動くと暑くなる。暑くならない程度にゆっくり登った。天気が良ければ南アルプス最大のお花畑を楽しめるところだが今回はそれどころではない。強風で顔が痛い。稜線に上がってしばらくは息苦しくて動けなかった。

 近くの中岳避難小屋に立ち寄ると何人かの登山者が待機していた。その中に顔見知りの登山者が3人いたのでそこからは行動を共にした。小屋には小学生の子供を2人連れた夫婦の登山者が居たのには驚いた。自分も昔は家族登山をしたがさすがに子連れで南アルプス南部は考えたことが無かった。

 ここからもまだ悪天候は続いた。ガスが濃くすぐ目の前が見えない。コースを外れないように苦労した。悪沢岳に着く頃には行動食を食べれる位まで風は収まっていたが相変わらず視界は悪い。千枚岳手前はやせ尾根と岩場の登りがあり緊張するが高山植物も多く天気が良ければ最高だろう。

 千枚岳から下る途中やっと風も収まり周囲も見えてきた。つまり天候が悪いのは山の上の部分だけでそこから下に抜け出してきたという事だろう。

 小屋前のテーブルで行動を共にした4人で打ち上げをした。ここからは富士山や笊ヶ岳が良く見える。まだ明日も残っているが本日は今回の登山で最も苦しい一日となったに違いない。無事にここまで降りれたことに感謝したい。

                   ガスに包まれた悪沢岳山頂

            千枚岳山頂               千枚小屋

            小屋前から見た笊ヶ岳と富士山

4日目 千枚小屋~清水平~椹島

 山に入って4日目になるとさすがに下界が恋しくなる。今回は久々に3泊4日の登山をした。昨日大変な思いをした緊張感から解き放されていたがまだ終わった訳ではない。椹島まで標高差1400mの下りが待っている。ただ距離が長い分傾斜は緩やかで歩きやすい。途中昨日一緒に行動した3名のうち2名の夫婦の方に会ったので挨拶をして先に行かせてもらった。下山したら風呂に入る事だけを考えてひたすら歩いた。

 椹島で風呂に入ろうかと思ったが着いた時はバスが出る時間だったのですぐに乗った。バスが出発する時椹島のスタッフの方が皆外に出て見送りをしてくれた。優しい気遣いに心温まる思いがした。

              小屋前から見た富士山    吊橋を渡ると林道に出る

 

 臨時駐車場に戻り自分の車を見ると少しほっとした気分になる。帰りは近くの白樺荘で風呂に入り食事をした。そういえばうちの妻が明日から1泊2日で木曾駒ヶ岳に行く予定だ。この車を使うから早く帰らねば。